「科学的な適職」を読んで、傾いていた気持ちに理由がついた
こんにちは。AIスタートアップでプロダクト開発をやっている者です。
転職活動をしている最中に読みました。
きっかけは自分から動いたというより、知人に声をかけてもらったことでした。世の中の動きを見ていてもタイミングとして悪くないなと思えて、気持ちとしてはけっこう傾いていたんですよね。
ただ、本当にそうしたほうがいいのかは、最後までかなり悩みました。それまで積み上げてきたものを手放すのがもったいなかったのと、単純に今の仕事にもやりがいを感じていたからです。辞めたい理由があるわけじゃないのに、行きたい理由はある。この状態がいちばん決めにくいなと思いました。
そんなときに読んだのが、鈴木祐さんの「科学的な適職」でした。タイトルどおり、仕事選びを根性論ではなく研究データから考える本です。
先に書いておくと、この本を読んで進路が変わったわけではありません。もう傾いていたほうを、確かめるための道具 として効いた、というのが正直なところです。
「好きを仕事に」が、避けるべきリストの1番目だった
いきなり出鼻をくじかれました。
この本、仕事選びでやりがちな失敗を「7つの大罪」としてまとめているんですが、その1番目が 「好きを仕事にする」 なんですよね。
中身は読んでもらうとして、ざっくり言えば「情熱は探して見つけるものではなく、注いだ時間に比例して後から生まれる」という話でした。
これは自分の実感とも合っていて。営業もエンジニアも、最初から好きで選んだというより、やっているうちに面白くなってきたというのが正直なところです。
だとすると、「やりたいことが特にない」みたいな状態も、そこまで悪いことじゃないのかもしれません。
判断基準を、職種名から7項目に変えた
一番の収穫はここでした。この本には「仕事の幸福度を決める7つの徳目」というものが出てきます。
自由・達成・焦点・明確・多様・仲間・貢献。この7つです。
職種名や会社名ではなく、この7項目で仕事を見る。それだけの話なんですが、「行くか残るか」という一択の問題として抱えていたものが、項目ごとの差として見えるようになったのは大きかったです。
やってよかったのは、読むことよりワークのほうだった
この本、普通に読み物としても読めるんですが、途中に何度かワークが挟まります。自分はそこを飛ばさずにやったのがよかったです。
特に効いたのが2つありました。
ひとつが モチベーションタイプ診断。質問に答えていくと、自分がどういう動機で働くタイプなのかが点数で出ます。自分は攻撃型45、防御型35でした。攻撃型寄りではあるものの、差が10なので極端ではないという結果です。
攻撃型に向いているとされていたのは、変化の速い環境や、進歩を実感しやすい仕事でした。ここは読んでいて素直に納得感がありました。
もうひとつが ヒエラルキー分析 という、複数の選択肢を項目ごとに採点して比べるワークです。自分が比べたのは現職と転職先で、実際にはほぼ行くと決めていた会社に、比較用にもう1社足した形でした。
正直に言うと、結論は最初から決まっていたんですよね。なので順位がひっくり返るようなことはなく、採点しても結果は追認でした。
じゃあ意味がなかったかというとそんなことはなくて、「なんとなくこっち」で決めていたものに、自分の言葉で理由がついた のが大きかったです。7項目のうちどれを取りにいって、どれを捨てる判断をしたのかがはっきりする。捨てるほうを自覚できたのが特によかったです。
とはいえ、決めたあとに採点しているので、自分に都合よく点をつけていた可能性は正直あります。この本の後半にまさに確証バイアスの話が出てくるので、順番が逆だったなとは思いました。笑
面白かったのが、この本が分析の精度そのものより 「決め方をあらかじめ決めておくこと」 を重視している点でした。人間の判断にはもともとバグがあるので、どれだけ情報を集めても、決め方を先に決めておかないと間違えるという話です。
ただ、振り返ると、ワークで出た答えそのものより 一旦立ち止まって自分の頭で考える時間が取れたこと のほうが大きかった気がします。気持ちが傾いているときって、そのまま流れで進んでしまうんですよね。紙に向かって自分の基準を書き出す時間を取らないと、決めたつもりで実は決めていない、みたいなことになりそうでした。
職種より先に、環境を見たほうがいい
もうひとつ、この本には「最悪の職場に共通する悪」のリストが出てきます。詳しくは書きませんが、要するに どれだけ仕事内容が良くても、環境側に地雷がひとつあれば全部台無しになる という話です。
労働時間まわりと、仕事のコントロール権の話が特に具体的でした。
転職先を検討するときってつい職種と年収の話になりがちなんですが、ここは完全に環境選びの話です。順番としてはむしろこっちが先なんだろうなと思いました。手を動かす前に考える、という意味では 世界一流エンジニアの思考法 にも近い話かもしれません。
結局どうするか
読み終えて自分の中に残ったのは、こういう整理でした。
- 好きなことを探しても出てこない。情熱は後からしか生まれない
- だから「どの職種か」ではなく「7項目のどれを取りに行くか」で考える
- 仕事内容がどれだけ良くても、環境に地雷があれば台無しになる
繰り返しになりますが、この本が自分の進路を決めてくれたわけではありません。もう傾いていたほうに対して、なぜそっちなのかを自分の言葉にできるようにしてくれた、という感じです。
でも今回に関しては、それで十分だったなと思っています。気持ちが決まっていても、理由を言葉にできていないと、あとから何かあったときに揺り戻されるので。
答えが書いてある本ではないので、読んだだけだと「ふーん」で終わると思います。ワークまでやって初めて、自分の判断基準が手元に残る。同じように迷っている人には、そこまでやる価値のある本です。
ちなみに自分が読んだのは旧版で、いまは新版が出ています。これから買う人は新版のほうがよさそうです。